こんにちは。CA-P(キャップ)(@canadaportal)です。
昨年の2017年9月15日に、カナダ保健省は、カナダ国内でのトランス脂肪酸の使用を禁止する法案を可決し、2018年9月15日から同法律が施行されました。
さて、この使用が禁止となったトランス脂肪酸とは、いったい何でしょうか。
「あぶら」の話
まずは、「あぶら」に関する基本知識から確認しましょう。
「油」と「脂」
「あぶら」には、「油」と「脂」との二種類の漢字が存在するのはご存知でしょうか。実は、下記のように使い分けてます。
- 油:常温で液体(食品では、種実を搾ってできる植物性)
- 脂:常温で固体(食品では、主に肉の脂身やバター、ラードなどの動物性)
この二種類の「あぶら」をまとめて「油脂」と呼んでいます。そして、「油脂」は、「脂肪酸」と「グリセリン」という分子から構成されています。
脂肪酸
ここからは、大学などで「化学」を専攻していないと初めて目にする用語だらけかもしれません。偶然(?)私は、化学専攻でした。
といっても専門分野以外なので、聞いたことはあります程度だったりします。とりあえずは、ザックリとすすめていきます。
脂肪酸には、炭素(元素記号:C)がすべて飽和結合で満たされた(二重結合を持たない)「飽和脂肪酸」と不飽和結合(一部に二重結合を持つ)の「不飽和脂肪酸」があります。
飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸
さらに「不飽和脂肪酸」のうち、二重結合を1個だけ持つものを「一価不飽和脂肪酸」と呼び、2個以上持つものを「多価不飽和脂肪酸」と呼んでいます。
トランス脂肪酸
いよいよ、ここからが、トランス脂肪酸の登場です。
「不飽和脂肪酸」には、炭素間の二重結合のまわりの構造の違いによって、「シス型(cis)」と「トランス型(trans)」があります。
シス(cis)とは、「同じ側の、こちら側に」という意味です。脂肪酸の場合、水素(H)が炭素(C)の二重結合をはさんで同じ側についていることを表しています。
一方、トランス(trans)とは、「横切って、彼方に」という意味です。脂肪酸の場合、水素(H)が炭素(C)の二重結合をはさんで相反する位置についていることを表しています。
また、トランス型(trans)の二重結合が1つ以上ある不飽和脂肪酸を「トランス脂肪酸(trans-fatty acid)」と呼んでいます。
シス型(cis)
トランス型(trans)
トランス脂肪酸を含む食品とは
「トランス脂肪酸」には、「天然の食品に含まれるもの」と「油脂を加工、精製する工程でできるもの」があります。
牛、羊、山羊のように、草を食べた後、一旦、飲み込んだ食べ物を再び口の中に戻して、再咀嚼(さいそしゃく)する動物を一般に反芻動物(はんすうどうぶつ)と呼んでいます。
反芻動物の胃の中で微生物の働きによってトランス脂肪酸がつくられます。そのため天然のトランス脂肪酸は、牛肉、羊肉、牛乳、乳製品などに含まれます。
一方、油脂の加工品では、マーガリン、ショートニングや、これれらを原料にしたパン、ケーキ、ドーナツや揚げ物などに含まれます。
なお、植物が原料となる「油」でも、気になる臭いを除去する目的で、高温処理をします。この熱処理行程で、トランス脂肪酸ができるため、サラダ油にも微量含まれています。
トランス脂肪酸と健康の関係
なぜ、カナダがトランス脂肪酸の禁止にしたのでしょうか。それは、トランス脂肪酸の摂取が健康に影響を及ぼすからです。
トランス脂肪酸の摂取量が多いと血液中のHDLコレステロール(善玉コレステロール)が減り⇘、反対に、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増える⇗と報告されているからです。長い間多く摂りすぎると心臓病のリスクが高まると言われています。
つまり、脂質の多い食品を食べ過ぎないように、バランスのよい食生活を送ることが大切です。穀物、肉類、海産物、野菜、果物、乳製品などさまざまな食物をバランスよく摂ることです。
ところが、カナダという国に来て思うのは、肥満体形の人をよく見掛けることです。究極的には、自己管理が困難であれば、最初から使えなくしてしまえばいいという法案したのではないかと勘ぐってしまいます。
部分水素添加油脂(PHOs)とは
部分水素添加油脂(PHOs)とは、油脂の融点を調整する目的で、水素添加処理を行うことによって、不飽和脂肪酸の二重結合の一部を一重結合とすることです。物性を改質した加工油脂をいいます。
なお、 PHOsとは、Partially Hydrogenated Oils の略称です。
工業的に生産される部分水素添加油脂(PHOs)には、トランス脂肪酸が多く含まれていることより、従来から使われている安全が確認されている物質には含まれないとしています。
2018年9月15日に、この法律が施行されたことによって、カナダでは国内産・国外産問わず、部分水素添加油脂(PHOs)を含むすべての商品の取り扱いが禁止となりました。
レストランでも、部分水素添加油脂(PHOs)を含む食材は一切使用できなくなりましたので、レストランやスーパー・マーケットでは、取り扱い商品の見直しが必要となりました。
最近、スーパー・マーケットでは、食品の価格が軒並み値上がりしているので、私にとっては、大ダメージです。そもそも、カナダに住んでいても、私は和食を好んで食べており、根本的に欧米の食生活スタイルではありません。とんだとばっちり感は否めません。
まとめ
個人的には、食生活の改善に政府が乗り出すんかい?という印象です。
食材の値段が上がったのはイタイですね。
【本記事のチェック・ポイント】
- カナダでは、2018年9月15日からPHOsを含む食材の使用は禁止です。
- その影響からは、食材が値上がりしています。
PHOsと関係ない食材まで、便乗値上げしているように感じるのですが・・・
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